医療のおはなし
お問い合わせ・ご相談
スタッフ募集

リスクマネージメント

介護老人保健施設におけるリスクマネジメントとは

 

施設における偶発的或いは人為的な損失(リスク)を発生しないように、もしリスクが発生した場合には、リスクを最小化し、更に発生したリスクに適切に対処する必要があります。

利用者は、家庭で安全に暮らす環境を保証しえないから施設が必要となります。
施設で、虐待事件が起きたり、介護事故が頻発してしまうなら、信頼を裏切ることになります。虐待事件を起こさないことはもちろんですが、「介護事故に対するリスクマネジメントを行う」ことが信頼を勝ち得ていくうえで非常に重要な意味を持つと考えます。

◆介護事故を予防する手段には、2つのアプローチがあります。
 ①介護事故に関する「法的責任を回避」することに重点を置いた考え方。
  介護事故の発生は、安全配慮義務違反による損害賠償という法的責任を生じさせます。
  法的責任を回避・軽減するための措置をできる限り講じておく必要があります。

 ②利用者の「尊厳を重視」した考え方。
  サービス利用者や家族にとっては、サービスを受けなければ本人の尊厳を保証する
  ことができないため、サービスを利用することになります。
  介護事故の危険にさらされることなく、安心・安全が保障されることは最低限の要請です。
   ・介護現場において、利用者の特性を把握した個人の尊厳を保証するケアの在り方。
   ・利用者が危険にさらされることのないように配慮していくためのスキル。
   ・利用者とのコミュニケーションに基づいて利用者の意向を十分に汲み取っていけるか。
  が重要になってきます。


 利用者の尊厳重視というアプローチと法的責任回避というアプローチは、利用者に対する安全性の確保・介護事故の予防という目的においては共通していますが、それぞれに対応する手段は異なってくる可能性があります。
〈転倒事故〉
法的責任回避ばかりを意識して、転倒事故を避けようとするならば、利用者の体を拘束してしまう。利用者の行動の自由が確保されていればいるほど、転倒の可能性が増えることになります。

〈誤嚥事故〉
食事中の誤嚥事故を避けようとするならば、きちんとした食事介助を止めて、他の栄養補給(経管栄養)にしてしまう。

〈徘徊〉
利用者の行方不明事故を避けるため、出て行かれないように利用者を閉じ込めてしまう。

法的責任回避ばかりを意識すると、利用者の尊厳を、ないがしろにしてしまうことになりかねないのです。

介護は、利用者を「単に生かしておく」為にあるのではなく、利用者が「よりよく生きられる」為に行われるべきものでなくてはなりません。
したがって、利用者の尊厳に即したリスクマネジメントの取り組みこそが、介護現場の専門性や質の向上に直結すると考えます。
施設の現場では、無理を強いられるような制度の見直しもあって、様々な業務に対して、少ない人員で、兼務によるやりくりを行わざるを得ないという難しさが存在します。

施設のリスクマネジメントにおいては、利用者の尊厳を重視することを大前提とした取り組みを行っていくことが大切となります。
あくまでも、利用者の尊厳を確保するということが目的であって、介護事故を無くすことは、其の手段に過ぎません。

介護事故を無くすことを最終的な目的にしてはいけないのです。